EDH《ハンス・エリクソン/Hans Eriksson》

こんにちは。グスタフ・クリムトです。

普段は絵を描いたり配信したりしています。

 

今回は統率者戦で愛用している、カジュアルな《ハンス・エリクソン》デッキの解説記事です。レベルは5-6を想定しています。

統率者

▲ ああ!ハンス、逃げて!統率者紹介よ!

ハンスの歴史

この記事で扱う統率者《ハンス・エリクソン》は面白いバックボーンを持つカードなので、おさらいしておきましょう。

その歴史を語るには避けて通れない1枚のカードがあります。

それは……

▲ 画像は「統率者(2011年版)」のもの。

「ああ!ハンス、逃げて!ルアゴイフよ!」

――サッフィー・エリクスドッターの最期の言葉

なんと《ハンス・エリクソン》は1995年発売の「アイスエイジ」に収録された《ルアゴイフ》のフレーバー・テキストで初めて登場した……ただそれだけで、それ以上でもそれ以下でもないキャラクターでした。

▲ 画像は「統率者レジェンズ」のもの。

「えっ、またか。」
――ハンス

しかし、開発のマーク・ローズウォーターが《ルアゴイフ》のフレーバー・テキストを気に入っていたことから、1998年発売の「ストロングホールド」に収録された《黄泉からの帰還者》のフレーバー・テキストに《ハンス・エリクソン》が再登場。

更には2004年発売のジョーク・セットアンヒンジドにて《"Ach! Hans, Run!"》として《ルアゴイフ》のフレーバー・テキストを再現するカードが登場しました。

2006年発売の「時のらせん」では、弟である*1《ハンス・エリクソン》に《ルアゴイフ》から逃げるように警告した《サッフィー・エリクスドッター》がカード化されました。

 

▲ 画像は「時のらせんリマスター」のもの。

《ハンス・エリクソン》に警告を発するも自身は《ルアゴイフ》に襲われて命を落としてしまう、というエピソードが上手くカードに落とし込まれているヴォーソス*2感涙の1枚になっています。

それから14年

2020年「統率者レジェンズ発売

テヴェシュ・ザットジャレッド・カルサリオンといったさまざまな時代・次元を出典とするキャラクターがカード化されました。*3

そしてそのなかには、一行のフレーバー・テキストから生まれた伝説のクリーチャーの姿がありました。

ハンスの能力

テキストが長く、少し分かりづらいので順番に紐解いていきましょう。

  1. 自身が攻撃するたびにライブラリーの一番上のカードを公開する。

  2. それがクリーチャーだった場合、タップ状態かつ《ハンス・エリクソン》の防御プレイヤーか、そのプレイヤーがコントロールしているプレインズウォーカーを攻撃している状態で戦場に出す。

    公開したカードがクリーチャーでなかった場合はそのまま手札に加える。

  3. クリーチャーを戦場に出した場合、そのクリーチャーと《ハンス・エリクソン》を格闘させる。

《ルアゴイフ》のフレーバー・テキストがそうだったように、《ハンス・エリクソン》がクリーチャーに目をつけられて襲われてしまうというユニークな能力を持っています。

「こんなに素敵な日が台無しになるはずはないよ、サッフィー。」

例を交えて能力を見ていきましょう。

例1)

  1. 《ハンス・エリクソン》が攻撃。

     

  2. ライブラリーの一番上のカードが公開される。今回は《自由なる者ルーリク・サー》だった。

  3. クリーチャー・カードだったので《ハンス・エリクソン》を防御しているプレイヤー*4に向かってタップ状態かつ攻撃している状態*5で戦場に出る。

  4. 《ハンス・エリクソン》と《自由なる者ルーリク・サー》が格闘を行う。

    今回のケースでは《ハンス・エリクソン》は《自由なる者ルーリク・サー》から6点のダメージを受けて死亡し、《自由なる者ルーリク・サー》は《ハンス・エリクソン》から1点のダメージを受ける。

  5. ブロック・クリーチャー指定ステップに入り、防御プレイヤーが《自由なる者ルーリク・サー》に対してどう防御するのか選ぶ。

ポイントとしては、《原初の嵐、エターリ》のように「攻撃するたび」を条件としている誘発型能力は《ハンス・エリクソン》の能力で戦場に出た場合は誘発しないことが挙げられるでしょうか。

 

▲ それでも、強力なことに変わりはない。

例2)

  1. 《ハンス・エリクソン》が攻撃。

     

  2. ライブラリーの一番上のカードが公開される。今回は三顧の礼だった。

  3. クリーチャー・カードではなかったので、公開した《三顧の礼》を手札に加える。

  4. ブロック・クリーチャー指定ステップに入り、防御プレイヤーが《ハンス・エリクソン》に対してどう防御するのか選ぶ。

このように《ハンス・エリクソン》の能力は踏み倒し、あるいはアドバンテージ源として機能します。

ハンスの活用

ここまで《ハンス・エリクソン》の歴史と能力を見ていきましたが、彼を活かして戦っていくにはどうすれば良いのでしょうか。《ハンス・エリクソン》と一緒に素敵な日を送るための、基本となるカードをいくつか紹介していきましょう。

 

まずは《ハンス・エリクソン》の能力で参照する自分のライブラリーの一番上を操作するカード。「ダブルマスターズ2022」で再録されて入手しやすくなった《師範の占い独楽》は定番中の定番です。似たような効果を持つ《森の知恵》《ミリーの悪知恵》なんかも良いですが、どちらもそれなりの価格のカードなので財布と要相談です。《有毒の蘇生》は死亡した自分のクリーチャーを使い回すのは勿論のこと、いざという時は相手の墓地にも干渉できるのは意識しておきたいです。

▲ 相手の墓地利用を阻止しろ!

ライブラリーの一番上からクリーチャーを踏み倒しても、肝心の《ハンス・エリクソン》がクリーチャーに襲われて死亡してしまうと統率者領域から唱え直すところからやり直しになってしまいます。それでは素敵な日が台無しです。

そこで……

 

《ハンス・エリクソン》を《ルアゴイフ》に襲われても死なない身体にします。

「こんなに素敵な日が台無しになるはずはないよ、サッフィー。」

なるほど、ミスリルの胴着》を身に着けていたからこう言えたんですね。

《ハンス・エリクソン》の能力は攻撃するたびに誘発するので、追加の戦闘フェイズを得ることで1ターン中に複数回誘発させることを狙えます。特に《アクームの怒り、モラウグ》は固有色に緑を含む《ハンス・エリクソン》では《桜族の長老》三顧の礼などを絡めることによって非常に凶悪な働きを見せます。《アクームの怒り、モラウグ》による追加の戦闘フェイズで勝利を収めた試合も少なくありません。しかし、《アクームの怒り、モラウグ》の効果で得た追加の戦闘フェイズの後には追加のメインフェイズが無いことには注意。

今回掲載するリストには採用していませんが、踏み倒されたクリーチャーがパワー1の《ハンス・エリクソン》と格闘することから、激昂と組み合わせてみるのも面白いかもしれません。

ハンスとあなた

いかがでしょうか。

たった一行のフレーバー・テキストから生まれ、愛されてきたキャラクターである彼。

そんな《ハンス・エリクソン》は、こんな人にオススメの統率者です。

  • 大型クリーチャーで蹂躙したい

  • クリーチャーを踏み倒して気持ちよくなりたい

  • ライブラリーの一番上をめくってドキドキしてみたい

  • ちょっと不器用な統率者を使ってみたい

  • 「ああ!ハンス、逃げて!」と言ってみたい

  • 自然の美を愛するハンスの繊細な感性に共感した

  • サッフィーの無念を晴らしたい

  • というか、ハンスの姉

この記事を読んでデッキを組むか考えている方に伝えておきたいこととしては、不確定とはいえどクリーチャーを踏み倒す統率者なのでそれなりにヘイトが高いことでしょうか。《ハンス・エリクソン》との対戦経験がある方を相手にすると《ミリーの悪知恵》を唱えるだけで「ヤバい」と言われます。まあ、実際強いんやけどな。

デッキリスト

▲ 随時更新。

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解説

一部の採用カードや、その傾向については「ハンスの活用」の項目も参照。

《ムウォンヴーリーの獣記し》

接死、呪禁、到達、トランプルのうちいずれかの能力を持つクリーチャー・カードを探してライブラリーの一番上に積み込むことで、より確実に《ハンス・エリクソン》を悲惨な目に遭わせることができるクリーチャーです。

「こんなに素敵な日が台無しになるはずはないよ、サッフィー。」

ライブラリーの一番上から《ムウォンヴーリーの獣記し》自身が踏み倒されて《ハンス・エリクソン》と格闘することになっても、《ハンス・エリクソン》を死亡させることがない2/1というP/Tもデッキに噛み合っています。

 

主なサーチ先は《原初の征服者、エターリ》龍王アタルカ》

《原初の征服者、エターリ》はグルール・カラーの統率者の特権。大量のアドバンテージを獲得した上でトランプルを持つ7/7の本体が残るのは充分すぎるほどの脅威です。龍王アタルカ》はタフネス5以下の厄介なクリーチャーを直接焼き払えるのは勿論として、飛行とトランプルを持つ8/8ということで勝負の決定打になり得る性能を持ち合わせています。似たような能力を持つ《ボガーダンのヘルカイト》とは異なり、戦場に出たときの能力ではプレイヤーにダメージを与えられないので注意しておきましょう。

《山賊の頭、伍堂》

戦場に出たときにライブラリーから装備品をサーチして、そのまま戦場に出せる人間・バーバリアン。

▲ こないだナザーンが伝説のクリーチャーとして存在することに驚きました。

《山賊の頭、伍堂》といえば《多勢の兜》との無限コンボが有名ですが、今回はミスリルの胴着》《ナザーンの槌》をサーチすることで破壊不能の無敵《ハンス・エリクソン》を誕生させることを狙います。破壊不能を付与する装備品としてダークスティールの板金鎧》も採用していますが、《ミスリルの胴着》と《ナザーンの槌》はどちらも戦場に出たときにそのままクリーチャーにつくことからテンポも良く《ハンス・エリクソン》ならびに《山賊の頭、伍堂》との相性に優れます。《ハンス・エリクソン》が《ナザーンの槌》を装備した場合は+2/+0の修整を受けることで3/4となるので、3/3の《山賊の頭、伍堂》と格闘させると《山賊の頭、伍堂》が死亡してしまう点については注意が必要です。

《活力》

当ブログでは《狼の友、トルシミール》の記事以来二度目の登場となる《活力》ですが、ダメージを軽減するというアプローチで無敵《ハンス・エリクソン》に貢献する一枚です。彼がいるだけで《ハンス・エリクソン》が格闘してもダメージを受けるどころかモリモリと成長していきます。

例えば「ハンスの能力」の項目で例1として挙げたシチュエーションだと、

《ハンス・エリクソン》の能力で戦場に出た《自由なる者、ルーリク・サー》は《ハンス・エリクソン》と格闘を行うことになりますが、《活力》をコントロールしていると両者が格闘で受けるダメージは軽減されて《自由なる者、ルーリク・サー》には+1/+1カウンターが1個、《ハンス・エリクソン》には+1/+1カウンターが6個置かれることになります。

「こんなに素敵な日が台無しになるはずはないよ、サッフィー。」

なるほど、《活力》と仲良くしていたからこう言えたんですね。

《アイスウィンド・デイルのウルフガル》

笑顔が似合うナイスガイ。攻撃するたびに誘発する能力を追加で誘発させられるという《二天一流、一心》に似た能力*6を持ちますが、本人も二度誘発する会戦能力によって戦力として貢献してくれます。

攻撃をトリガーとする《ハンス・エリクソン》と相性が良いのはもちろんとして、踏み倒し先として採用している大型クリーチャーの中にも《原初の嵐、エターリ》のように攻撃するたびに誘発する能力が洒落にならないものがいるので戦場に揃ってしまうととんでもないことになります。

 

《虚空の選別者》

▲ デザイン上の美しさを感じさせる一枚。

マナ・コストが偶数の呪文を唱えることを制限する能力も強力ですが、このデッキではブロックに制限を課す能力が強く使えます。攻撃することが重要な《ハンス・エリクソン》はもちろん、《ハンス・エリクソン》によって踏み倒された後続の攻撃も通りやすくなります。

9マナとはいえ、レベル帯によっては“やりすぎ”になりかねないカードなので注意しましょう。

《ルアゴイフ》

趣味です。

ちなみに、対戦中に《ハンス・エリクソン》が《ルアゴイフ》に襲われたことはまだ一度もありません。

《ドゥリンの扉》

さながら2枚目の《ハンス・エリクソン》とも言えるカード。ライブラリーの一番上のカードを公開する前に占術2を行えるので《ハンス・エリクソン》より気が利いています。

後半の自分がコントロールしているクリーチャーのタイプに応じて能力を与える効果は踏み倒されたクリーチャーにしか及びませんが、《野生の心、セルヴァラ》のように採用を充分に検討できるエルフもいるので意識の隅には置いておきましょう。

《ドゥリンの扉》クリーチャーが攻撃するたびに能力が誘発するパーマネントなので、先程紹介した《アイスウィンド・デイルのウルフガル》ともシナジーを発揮します。

《隠れ潜む捕食者》

野生の目にとっては、全てが餌。

このフレーバー・テキストに違わず、対戦相手のあらゆる呪文に反応してライブラリーの一番上からクリーチャーを踏み倒そうとする“ワル”のエンチャントです。難しいことは考えずとも、対戦相手が3人いる統率者戦においてこのエンチャントがいかに極悪かは明らかでしょう。しかも、自分でライブラリーの一番上をリフレッシュする能力まで備わっています。白は《息詰まる徴税》、青は《リスティックの研究》、緑は《隠れ潜む捕食者》です。

《ヤヴィマヤのうろ穴》

Yavimaya Hollow / ヤヴィマヤのうろ穴
伝説の土地
(T):(◇)を加える。
(緑),(T):クリーチャー1体を対象とし、それを再生する。

非常に軽いコストで継続的にクリーチャーを再生できる土地です。土地としてもアンタップインかつ、ちゃんとマナが出るので扱いやすいです。クリーチャーを再生したときはそのクリーチャーをタップするのをお忘れなく。

《ハンス・エリクソン》がクリーチャーとの格闘によって死亡してしまうのを防いだり、対戦相手が繰り出す単体除去・全体除去から《ハンス・エリクソン》あるいは他のクリーチャーを守るために使うのが主な役割ですが、なんといっても《ヤヴィマヤのうろ穴》を構えることで対戦相手に「あそこに除去を撃っても無駄だ」と思わせられるのがめちゃくちゃ強いです。

非常に高性能ですが再録禁止カードなのでそれなりに値が張ります。強さは本物です。

《山賊の頭の間》、《炎族の村》

《ハンス・エリクソン》に速攻を付与することで唱えたターンからテンポよく攻撃できるようにする土地です。《ヤヴィマヤのうろ穴》もそうなのですが、土地なので干渉されることがほとんどありません。

《山賊の頭の間》は3点のライフコストも統率者戦では誤魔化しが効きますが、確定タップインなので注意。《炎族の村》と違って追加のマナを要求しないので序盤に使いやすいですが、ゲーム終盤はやはりライフコストが重くのしかかってくることも。

《炎族の村》は速攻を付与するには追加の赤マナが必要ですが、能力を使わないときはシンプルに赤マナが出る土地として振る舞ってくれます。速攻を付与する能力は相手のクリーチャーにも使えるので政治の材料にしても面白いです。そしてエレメンタルを公開することでアンタップインとなる能力も忘れてはいけません。先程紹介した《活力》はエレメンタルですからね。

 

廉価版(24/02/03追記)

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晴れる屋でのシングル価格が600円以下*7のカードのみで構築しています。

この記事を読んで《ハンス・エリクソン》に興味を持ってくださった方が「でも《ヤヴィマヤのうろ穴》とか高いし……」とデッキを組むのを断念されるのはあまりにも勿体ないので、限られた予算の中でも組めるリストを用意しました。ただし、僕は実際にこのリストを使ってゲームをプレイしたことがない点には留意してください。

キリが良い500円ではなく600円という設定にしているのは《英雄的介入》をどうしても採用したかったからです。

《ハンス・エリクソン》を破壊不能にしてクリーチャーを踏み倒しまくるというコンセプトはそのままに、《ウッド・エルフ》や《スカイシュラウドの要求》など追加のランプ*8を採用して大型クリーチャーを手札から唱えやすくしています。

盤面に干渉できるカードも追加で採用しているので、レベルのマッチングさえ適切に行われていれば初心者の方でも何も出来ずに負けたと感じられにくくなっているはずです。

 

サイドボードにはデッキを強化するときに採用を検討してほしいカードを、検討中にはシングル価格600円以下で入れ替え候補となるカードを入れてみました。参考にしてみてください。

最後に

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

《ハンス・エリクソン》はプレイしていて非常に楽しい統率者です。

皆さんもハンスと一緒に素敵な日を過ごしてみてはいかがでしょうか。

「こんなに素敵な日が台無しになるはずはないよ、サッフィー。」

この記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.

*1:日本語記事に準拠

*2:開発の一人であるマーク・ローズウォーターが提唱した、フレイバー的側面を楽しんでいるプレイヤーを指す用語

*3:逆嶋顕至のように再びカード化されたキャラクターも少なくありません

*4:もしくは、そのプレイヤーがコントロールしているプレインズウォーカー

*5:《自由なる者ルーリク・サー》が持つ警戒は無視される

*6:二天一流、一心》は《アイスウィンド・デイルのウルフガル》とは違って、相手が攻撃するたびに誘発する能力を持つ自分のパーマネントの能力も追加で誘発させます

*7:24/02/03時点

*8:恒久的なマナ加速のこと。ランパンとも。その名称は《不屈の自然/Rampant Growth》を由来とするという説があるが、はっきりしない